2021.11.25掲載
2022.05.25改定
2022.08.12改定
✔︎子どものこと、家族のこと、自分は当事者じゃないんだけど、臨床心理士に相談してもいいのかな?
✔︎自分は対人援助職だけど、こころの専門家じゃない。臨床心理士にこころの支援について聞いてみたい!
✔︎生徒との関わり方について、こころの専門家の意見を聞きたい!
こころの問題で悩むのは、決して当事者だけではありません。
当事者の家族や先生、関係者もたくさん悩んでる!
臨床心理士は、カウンセリングの専門家というイメージが強いですが、実はそれだけではありません。こころの問題を抱えた当事者だけじゃなく、当事者の関係者に対しても支援を行います。そうした援助は「コンサルテーション」と呼ばれます。この記事では、臨床心理士のコンサルテーションについてわかりやすく解説します!記事を読むことで、当事者だけじゃなく、関係者も臨床心理士に相談していいんだ!ということを知っていただけます。
ライターは臨床心理士の有資格者です。資格取得後は、教育領域の心理職と、専門学校や大学の講師の仕事をしてきました。心理職としての実体験と、講師の仕事で鍛えた伝える力を駆使して、わかりやすい記事を書いていきます!
それでは、早速内容に入りましょう!
臨床心理学的地域援助
臨床心理学的地域援助ってなに?
臨床心理学的は、次のように説明されます。
専門的に特定の個人を対象とするだけでなく、地域住民や学校、職場に所属する人々(コミュニティ)の心の健康や地域住民の被害の支援活動を行うことも臨床心理士の専門性を活かした重要な専門行為です。これらのコンサルテーション活動は、個人のプライバシーを十二分に守りながらも、コミュニティ全体を考慮した心の情報整理や環境調整を行う活動ともいえます。また、一般的な生活環境の健全な発展のために、心理的情報を提供したり提言する活動も“地域援助”の業務に含まれます。
日本臨床心理士資格認定協会HP
わかりやすく解説していきます!
臨床心理学的地域援助は「コンサルテーション」!
臨床心理学的地域援助をひとことでいうと、「コンサルテーション」です。
コンサルテーションとは、ある領域の専門家が別の領域の専門家の相談に応じて、アドバイスや情報提供を行うことです。
臨床心理士の場合は、こころの支援の専門家です。別の領域の専門家としては、例えば次のような人たちが挙げられます。専門家といっても、なんらかの専門職である必要はなく、例えば親なら子どもの専門家など、幅広い視点で対応します。
- 教師(教育の専門家)
- 介護士(高齢者福祉の専門家)
- 保育士(保育の専門家)
- 親(息子・娘の専門家)
- 配偶者(旦那・妻の専門家)
カウンセリングでは、カウンセラーとクライエントの間に明確な力関係の構造が無いことが大きな特徴です。一方、コンサルテーションは、「教える人と教わる人」というはっきりとした構造があります。
コンサルテーションは、例えば次のようなときに行われます。
- ある保育園で保育士さんから「家庭環境が複雑な子どもがいて、どう接したら良いかわからない。臨床心理士の視点からアドバイスをしてくれないか」と相談が持ちかけられたとき。
- ある学校で親御さんから「子どもとの関わり方について臨床心理士の立場から助言して欲しい」と相談があったとき。
なお、臨床心理士は具体的に次のような領域についての知識を持っています。
✔︎臨床心理学
✔︎子どもの発達(成長や発育)
✔︎発達障害
✔︎カウンセリング
✔︎心理療法
✔︎人との関わり方(自分を大切にできる人との付き合い方など)
✔︎ストレスマネジメント
これはあくまで一例です。臨床心理士によっては「自分はこんなこともできるよ!」など、さまざまな引き出しを持っていることがありますので、コンサルテーションをお願いする臨床心理士に直接聞いてみると良いと思いますす!
目的がはっきりしないと不全感に陥っちゃう!
臨床心理士に相談しに行ったら話は聞いてくれたけど、なんのアドバイスもくれなかった!
なんて話はよく聞きます。そんなときは、臨床心理士の目的と、相談に行った人の目的がずれてしまっている可能性があります。
コンサルテーションは、明確なアドバイスや情報提供をします。一方、カウンセリングはアドバイスや助言を避け、じっくり話を聞いて、相談に来た人が自分のこころと向かい合うのを手伝います。
ですので、相談しに来た人が
コンサルテーションをして欲しい!
と思っても、臨床心理士が
カウンセリングをしよう!
と考えてしまうと、需要と供給がずれてしまいます。
もちろん、臨床心理士側も「この人は何を求めているのかな!?」と一生懸命考えます。それでももし、「なんだかずれてるな」と思ったら、ぜひ、「繰り返し来れるわけじゃないので、アドバイスや情報提供をしてくれませんか?」と伝えてみてください!
臨床心理士が行う調査・研究
臨床心理士が行う調査・研究とは
最後に臨床心理士が行う調査研究は、次のように説明されます。
日本臨床心理士資格認定協会HP
心の問題への援助を行っていくうえで、技術的な手法や知識を確実なものにするために、基礎となる臨床心理的調査や研究活動を実施します。心理臨床の個別性に由来するさまざまな問題や課題に関する特化した研究技法ともいわれる“事例研究”の体験学習は、臨床心理士に求められる大切な専門業務と直結しています。高度専門職業人として、自らの専門資質の維持・発展に資するきわめて重要な自己研鑽に関する専門業務といえましょう。
わかりやすく解説していきます!
調査・研究は、より良いこころの支援を考えること!
「調査・研究」というと難しそうな表現になりますが、簡単にいえば「より良いこころの支援を考えよう!」というお仕事です。
そして、そうした営みは「臨床心理査定」「臨床心理面接」「臨床心理的地域援助」を軸にして行われます。
ひとことで研究といっても、その形態はさまざまです。アンケートなどで大量のデータを収集して統計的な分析を行うものから、カウンセリングの事例(もちろん個人が特定されないようにしっかりと配慮をしたもの)について深く検討していくものまであります。
臨床心理士は、大学院で基本的な調査・研究の知識や技術について学びます。もちろん、すべての臨床心理士が調査・研究に従事しているわけではありません。支援一本で突き進む方も多いです。しかし、学会や研究会で共有される最新の情報や、時代のトピックについて調査された成果、研究された結果について、ある程度理解できる素養は、共通して持っています!
おわりに
この記事では、臨床心理士の専門業務のうち、「臨床心理学的地域援助」と「調査研究」について解説しました。
記事のポイントは次の通りです!
✔︎臨床心理学的地域援助は「コンサルテーション」!
✔︎コンサルテーションでは、当事者だけじゃなく、関係者にもアドバイスや情報提供ができる!
✔︎臨床心理士と会うときは、コンサルテーションをして欲しいのか、カウンセリングをして欲しいのか、目的をはっきりさせていこう!
✔︎臨床心理士は、調査・研究でよりよいこころの支援を常に探求し、有資格者同士で情報共有している!
臨床心理士について、すこしわかったぞ!と感じていただけると幸いです!
To be continued.
引用・参考
日本臨床心理士資格認定協会HP
植村勝彦 他編(2006).よくわかるコミュニティ心理学.ミネルヴァ書房.