【認知的評価理論】ストレスのメカニズム|対処法がわかれば怖くない!一次的評価と二次的評価

認知的評価理論 アイキャッチ

✔︎最近うつむきがちな日が続いてて…ストレスにやられているなって感じる。

✔︎職場にいくのしんどいいなぁ…漠然と気が重いって日が続いてる。

✔︎最近ちょっとしたことでも胃がキリキリしちゃう。気持ちがすり減ってるのがわかる。

ストレスフルな毎日を送っていると、ちょっとしたことでもこころが刺激を受けて悲鳴をあげてしまいます。

ああ!もうなにもかも投げ出したい!

そう思いながら毎日過ごしている方も多いのではないでしょうか。

そんなあなたに朗報です!もしかしたら、あなたのストレス、本当はストレスじゃないかもしれません!

今回紹介するのは、ストレスの認知的評価理論です。これは、「ある事象がストレスになるのは、その事象が脅威であり、かつ対処できないときだ」という考え方です。つまり、対処できる脅威はストレスにならないということです。記事を読むと、今あなたがストレスに感じていることが本当にストレスなのか、考え直するヒントを得ることができます!

Writer

ライターは臨床心理士の資格を持っています。臨床心理士の仕事には、講演や特別授業を通じたこころの健康に関する情報提供も含まれます。そのなかでもストレスとの上手な付き合い方は、ライターが何度も取り組んだ、大きなテーマのひとつです!この記事では、そうした取り組みを文章にしてまとめていきたいと思います!

それでは、内容を見てみましょう!

目次

認知的評価理論とは

はじめてストレスが生じるとき

人がストレスを認識するメカニズム【認知的評価理論】

ストレスの認知的評価理論は、ストレスのメカニズムについて説明する一つの考え方で、人が自分の身に降りかかったさまざまな事象をストレスと捉えるまでに、2つの検問を想定します

ひとつめの検問は一次的評価と呼ばれ、その事象が脅威かどうかを判断します。ふたつめの検問は二次的評価と呼ばれ、脅威と判断された事象に対して自分が対処できるかどうか判断します。

このとき、脅威であり、自分が対処できないと判断された事象に対して、私たちはストレスを感じると考えるのです。

ではより詳しく見ていきましょう

【一次的評価】その出来事が脅威かどうか

不利益と利益の双極

脅威の例

脅威のなかでも特にわかりやすいのは「責任」です。

社会人になると、次のような責任が生じるポジションに着くことがあります。

✔︎ある営業所の売り上げの責任者になる。

✔︎ある部署の責任者になる。

✔︎ある企画の運営責任者になる。

例えば、売り上げは買い手あってのものですから、売り手がどんなに努力しても望んだ成果が得られないことも少なくありません。そして、売り上げが上がらなかったときは、責任者であるあなたの評価に影響します。このように、統制不可能な要素を孕む事柄は多くの場合脅威に認定されます。

こうした「責任」は、社会人だけのものではありません。

✔︎文化祭の実行委員長として運営の責任を担うことになった。

✔︎クラスの代表委員になって、クラスをまとめる責任を持つようになった。

✔︎親として、子どもの将来に責任を持つようになった。

✔︎飲み会の幹事として、会の運営の責任を持つようになった。

文化祭の運営も、クラスがまとまるかどうかも、子どもの将来も、飲み会の成功も、あなた個人が努力したところで、どうにもできない部分は少なからずありますから、どうしても脅威になってしまいます。

改めて脅威ってなに?

脅威に潜む両面性

脅威とは、自分にとって大きな不利益が生じる可能性があることです。一方、そこには大きな利益が生じる可能性もありますこの両面性が、私たちを脅威から逃れられなくさせるのです。

例えば、先の例で営業所の責任者になって売り上げが上がれば、あなたの評価はどんどん上がります。文化祭の実行委員として、運営を成功させれば、内申点が上がったり、ガクチカとして、就職面接でアピールするネタができます。

こうした不利益と利益、双極の間を揺れ動くとき、私たちは脅威を感じるのです。

そこに不利益しかないのなら、さっさと逃げ出せるはずなんです!

さまざまなところに双極は潜んでいる

この不利益と利益の双極は、気がつかないだけで至る所に潜んでいます。

例えば「人間関係はちがうのでは?」という疑問を持つ方がいるかもしれません。遊びに誘われるのが断れなくてストレスを感じる人は多いです。一見するとここには、不利益と利益の双極が見当たらないように思えます。

でも、なぜ断れないかをよく考えてみると、そこに不利益と利益の双極が顔を出します。

断れない理由として、多く挙げられるのが、「嫌われたくない」「付き合いが悪いと思われたくない」です。逆をいえば、遊びを断らないことで、「嫌われない」「付き合いが良いと思われる」もっというと、その集団やグループに、に自分の居場所を確保できる。そんな利益が垣間見えます。

私たちのストレスの素は、よくみると不利益・利益の双極で説明できます!

あなたのストレスに双極はありますか?

あなたのストレスの素を見てください。

✔︎成功したときに得られる利益がありますか?

✔︎失敗したときに被る不利益はありますか?

このどちらかが無いとき、もしかしたら、それは脅威と認定する必要がない。つまり、実はストレスに感じる必要がないものかもしれません!

【二次的評価】その脅威に対処できるかどうか

対処できれば脅威も平気

対処の例

売り上げや企画運営の責任は、大きな脅威になります。しかし、どんな脅威でも、対処できると考えられればストレスにはなりません。

例えば、ある営業所の売り上げの責任者になったとします。売り上げをあげるのは大変なことですが、実は水面化で進めていた商談が複数まとまる見込みであるため、少なくとも今期の売り上げはほぼ確実に確保できる。そうした核心があれば、とりあえずはストレスを感じることなく毎日を過ごすことができます。

他にも、次のように脅威に対する対処の例を挙げることができます。

✔︎企画の運営責任者になったけれども、同じ企画を今まで何度も成功させてきているから、今回も成功させる自信がある。

✔︎クラスの代表委員になったけれども、今まで何度も経験しているので、1年間やりきる自信がある。

✔︎飲み会の幹事になったが、良いお店も知っているし、気心知れたメンバーだから成功する見込みがある。

対処できる脅威はストレスにはならない

このように、脅威の度合いは変わらなかったとしても、その脅威に対処する策を持っていたり、対抗できる自信を持っていればストレスを感じることはありません。もちろん、こころの負荷がゼロになることはありませんが、脅威がストレスとして、あなたのこころを蝕むことはありません

対処できないは思い込み!

対処できないことはない!

対処できない脅威はない

こうしてみると、脅威に対してストレスを感じなくて済むのは、脅威に対処できる能力がある人だけのように見えてきます。しかし、そうではないのです。実は、対処できない脅威はありません。多くの場合、私たちは不安と自分であげたハードルによって、脅威に対処できないと思い込んでしまっているだけなんです

先に述べたとおり、脅威とは不利益と利益の双極に挟まれることによって生じるものです。

そして、多くの場合、この不利益と利益は、あなたのこころのなかで、現実よりもはるかに大きく育てられています

不安に思うようなことは案外起きないもの

わかりやすい例として、文化祭の実行委員長を挙げてみましょう。

あなたは文化祭の実行委員長です。文化祭には多くの学生が参加します。そのため、本当にたくさんの事件が起こります。あなたは事件の報告を聞く度に、心配して、胃をキリキリさせるかもしれません。

✔︎大丈夫かな…
✔︎文化祭が台無しにならないかな…


しかし、ほとんど全ての事件は、最終的には大事にならずに収束します。もちろん、事件を収束させるためにあなたをはじめ、たくさんのメンバーが奔走するとは思います。でも、結局なんとかなるものです。

先のことを考えると不安になってしまいます。でも、実際は、あなたが想像するような心配は案外起こらないものです。

だいたいのことは、結局なんとかなります!

ハードルは自分であげている

また文化祭の実行委員長の話をします。

運営の仕方によっては、文化祭の盛り上がりに欠けるかもしれません。ガクチカとしてアピールできるほとの話のネタは得られないかもしれません。でも、その文化祭に参加して良かった。そう思う人が一人でもいたら、それは成功と言っても良いのではないでしょうか。

多くの場合、私たちは、「うまくやらなきゃ」「成功させなきゃ」「すごいことをしなきゃ」と自分で自分のハードルをどんどんあげていきます。文化祭の例だと、「お客さんがたくさん入らないといけない」「たくさんの出店がないといけない」「売り上げが多くないといけない」といったところでしょうか。

しかし、これらはあくまで自分で設けたハードルです。本当は、「文化祭は中止にならなければ良い」し、「ひとりでも良かったと思ってくれる人がいれば十分」なのですから。

自分で挙げたハードルは、自分で下げることができます。自分が背負っている責任を見つめ直してみまよう。そして、「今自分が考えているハードルは、本当に必要なものなのか?」と、改めて考えてみると良いと思います。

社会人は特別じゃない

これは学生だから…というわけではありません。社会人だって同じです。

社会人になると、「組織の一員だから」「お給料をもらっているのだから」と強い責任を感じる人が多いです。そして、それをよしとする風潮もあります。こうした強い責任感は、大きな不安を喚起し、対処のハードルをあげていきます

しかし、先の例同様、社会人としての仕事でだって、あなたが不安に感じているような出来事は滅多に生じませんし、高く見えるハードルも、やはり自分で設けているものです。

売り上げが上がらなくてもすぐに会社を解雇されることはありませんし、仮に解雇されてもたとしても、生活がたちゆかなくなることも、あなたの人生が無価値になることも絶対にありません。極端な話ですが、選ばなければ、仕事はいくらでもあります。

どんな脅威でも、一度落ち着いて考え直せば、案外対処できるものだと捉えなおくことができるかもしれません!

おわりに

この記事では、ストレスの認知的評価理論について解説してきました!

記事のポイントは次の通りです。

✔︎認知的評価理論では、事象に対して、一時的評価と二次的評価の2段階の検閲を設ける!
✔︎一次的評価は、事象が脅威であるかどうかの検証!
✔︎二次的評価は、脅威が対処可能であるかどうかの検証!
✔︎事象が脅威であり、かつ対処不可能なとき、ストレスになる!
✔︎多くの場合、脅威は自分で作っている!改めて自分の脅威を見つめ直してみましょう!

参考・引用

林峻一郎編・訳(1990). R.S.ラザルス講演ストレスとコーピング ラザルス理論への招待.星和書店.

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この記事を書いた人

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