2022.01.12.掲載
毎日の生活のなかで感じる「怒り」や「イライラ」に悩まされている方は多いと思います。
前回の記事では、「こころのコップ」という考え方を紹介して、「怒り」や「イライラ」がどのようにして生じるのか、そのメカニズムについて解説しました。
この記事では「こころのコップ」に溜まった感情が溢れ出して「怒り」や「イライラ」に変わる前に、どのように処理したら良いかということを記事にしていきたいと思います。
「怒り」や「イライラ」の素を溜め込まない工夫
「怒り」や「イライラ」の素になる感情のありか「こころのコップ」
私たちのこころのなかには「コップ」のようなものがあります。
これを「こころのコップ」と名づけましょう。
この「こころのコップ」には、一次的感情が注がれています。
一次的感情とは「寂しい」「不安」「恐怖」といった、私たちが人付き合いのなかで感じるネガティブな感情です。
人付き合いは社会で生活するうえで必要不可欠なものです。
人付き合いのなかで、私たちは「所属感」「安心」「喜び」といった心地よい感情を得ることができます。
しかし、それと同時に人付き合いは「寂しさ」「不安」「恐怖」といったネガティブな感情を生じさせることもあります。
このうち、心地よい感情は、元気の源として私たちのこころに吸収され、消化されていきます。
一方、ネガティブな感情を消化するのは実はとっても難しく、多くの場合、「こころのコップ」に少しずつ溜め込まれていきます。
そして、「こころのコップ」の容量を超えてしまったとき、一次的感情は「怒り」や「イライラ」に姿を変えて溢れ出します。
こうして溢れ出した感情が二次的感情です。
「こころコップ」にはなぜ感情が溜まるのか。
なぜ「こころのコップ」には一次的感情が溜まるのでしょうか。
その理由のひとつは行き場がないからです。
「寂しい」という感情をテーマにして、少し極端な例を出しますね。
あなたが遠距離恋愛中に「寂しさ」を募らせているとき、恋人に「寂しい」と打ち明けたとします。
私寂しい!
それを聞いた恋人が仕事や学校を休んで駆けつけてくれたら、とっても嬉しくて満たされた気持ちになりますよね。
大切な君が「寂しい」っていうから
会いに来たよ!
それは、恋人があなたの気持ちを受け止めてくれて、しかも態度でそのことを示してくれたから。
でも、、、
もう別れましょう
恋人に別れを告げられたとき、自分をふった相手に「寂しい」なんてなかなか言えませんよね。
「寂しい」なんていてない!
この気持ち、どうすれば良いんだ!
だって去っていこうとしている人が自分の「寂しさ」を受け入れてくれるはずがないからです。
そんなとき、あなたの「寂しさ」は行き場を無くしてしまいます。
行き場をなくした感情は、「こころのコップ」に収められ、いつまでもあなたのこころに居座り続けます。
これは極端な例ですが、多くの場合、私たちのネガティブな感情は他者との関わりのなかで生じますし、相手に伝え、受け止めてもらうことで解消します。
今回の記事で提案するのは、「こころのコップ」に溜め込まれた一次的感情を、溢れ出す前に少しずつ外に出していく方法です。
◇◆◇◆◇
え!?
そんなことができるの?
うん!
しかも、新しいことじゃなくて、前に紹介した「Iメッセージ」を使うことでできるんだ!
◇◆◇◆◇
感情を表現する技術「Iメッセージ」
Iメッセージの詳細は以前の記事に書いてあるので、簡単な説明にとどめますね。
Iメッセージとは、「主語が私」のメッセージです。
メッセージには、IメッセージとYouメッセージの2種類があります。
Iメッセージは主語がI(私)のメッセージ、Youメッセージは主語がYou(あなた)のメッセージです。
例えば、人から仕事を頼まれたとき
〇〇さん、この仕事を(あなたが)明日までにやっておいて!
と言われるのと、
〇〇さん、この仕事を明日までに(私が)お願いしたいんだけど、どうかな?
と言われるのでは、かなり印象が違いますよね。
このように、「Iメッセージ」は、自分の考えや気持ちを柔らかく相手に伝える技術です。
Iメッセージで感情を「汲み出す」
この「Iメッセージ」で感情を相手に伝えることで、「こころのコップ」から一次的感情を汲み出そうというのが、「アンガーマネジメント」のアイディアです。
繰り返しになりますが、「Iメッセージ」は自分の気持ちを柔らかく相手に伝える技術です。
もちろん、「感情」だって例外ではありません。
私は寂しい
私は苦しい
私は嫌な気持ちになっちゃう
このように、
「こころのコップ」から感情が溢れ出る前に
一次的感情が「怒り」という二次的感情になる前に、汲み取って、「Iメッセージ」で外に出してあげるのです。
◇◆◇◆◇
でも、そんな起用に自分の気持ちって伝えられるもの?
◇◆◇◆◇
「こころのコップ」から感情を汲み出すコツ
自分のネガティブな感情を表現するのはとってもエネルギーのいることですから、方法を知ったからといっていきなり実践できるものではないでしょう。
そもそも、自分の一次的感情に気づくのは難しいものです。
なぜなら、一次的感情は直視するが辛いので、多くの場合、目をそらして生活しているからです。
それが、「こころのコップ」がタプタプで、いまにも溢れ出しそうなときならなおさら直視することはできないでしょう。
◇◆◇◆◇
じゃあどうすれば良いの?
これからそのコツを解説するね!
◇◆◇◆◇
実は、「こころのコップ」に溜まりやすいのは、いつも似たような感情だったりします。
「笑いのツボ」ってひとそれぞれですよね。
王道の笑が好き!
コメディが好き!
シュールな笑が好きね!
捻りが効いた笑が好きだね!
同じように、「こころのコップに貯まりやすい感情」も人それぞれ傾向があります。
自分が怒ったり、イライラしたりしている場面を思い出してみてください。
そうすると、いつも同じような場面で「怒り」や「イライラ」を感じていることに気づくと思います。
ある人は「押し付けられた」ときにイライラするし
ちょっとあれやっといて!
ある人は人に「そっけなくされた」ときに怒るかもしれません。
ふーん、、、まあ興味ないけど
これらは、「こころのコップ」から感情が溢れ出した瞬間です。
なんなのよ!
「押し付けられた」人は我慢した「辛さ」を注いだかもしれませんし
そっけなくされた人は「寂しさ」を注いだのかもしれません。
あなたは、いつもどんな感情を「こころのコップ」に注いで、
どんな感情を溢れさせていますか?
こうしていつものパターンを思い返していくと、自分がいつもどんな感情を「こころのコップ」に注ぎ込み、溢れさせているのか気が付くことができると思います。
ここまでくれば、あとはほんの少しの勇気です。
あ、今いつものやつ注がれたぞ
と思ったとき、手がつけられなくなる前に少し汲み出してあげる
実は私「辛い」んです
実は、僕「寂しい」んです
もちろん、「Iメッセージ」を使ったからって、絶対に相手が受け取ってくれるとは限りません。
でも、実は必ずしも一次的感情を抱いた相手に伝えなくてはならないというわけでもないんです。
「愚痴」や「相談」というかたちでも、信頼できる友人、恋人、家族など、こころの距離が近い誰かに受け取ってもらえるだけでも、「こころのコップ」に溜まった感情は消化されます。
◇◆◇◆◇
いきなり会社の上司や同僚に感情を伝えるのはきついけど、身近な人になら私でもいえるかも!
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最後に要約して終わりにしますね。
①自分の「こころのコップ」に溜まりやすい感情に気が付く
②勇気を出して汲み出してみる
このふたつができるようになると、もしかしたら、人付き合いの中で感じる「怒り」や「イライラ」を今よりも少し上手にコントロールできるようになるかもしれません。
おわりに
今回は、「こころのコップ」に溜まった感情を汲み出す方法というテーマで「アンガーマネジメント」の方法を解説してみました。
この方法は、「怒り」や「イライラ」の予防的なやりかたです。
「アンガーマネジメント」では強い「怒り」や「イライラ」を感じたときにどうすれば良いか、つまり「対処」の方法も教えてくれています。
◇◆◇◆◇
引き続き、「アンガーマネジメント」をテーマにして記事を書いていきますね!
To be continued.
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引用・参考
安藤俊介(2018).怒りが消える心のトレーニング.Discover.
安藤駿介監修・戸田久実著(2016).いつも怒っている人もうまく怒れない人も図解アンガーマネジメント.かんき出版.
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