2022.07.07掲載
✔︎我慢して我慢して…最後に爆発しちゃう。もうこんなの疲れたよ!
✔︎後輩の指導をすると、キツいって怖がられちゃう。本当は仲良くやりたいのに!
✔︎いつも感情的になっちゃう…ほんとはもっと柔らかく注意したいのに…
「注意するとき」「意見するとき」「断るとき」いつもキツく言いすぎちゃう。そうして、友達や同僚、部下とぶつかったり、怖がられたりしてしまう。
ほんとは…もっとみんなと仲良くしたいのに…
本音とは裏腹な行動をしちゃう。そうして悩む人ってとっても多いですよね。
なんで私たちって、こんなに不器用なのでしょう…
その答えは、私たちは「怒り」のコントロールがとっても苦手だからです。私たちの多くは、「怒っちゃダメ」という文化のなかで生活しています。そのせいで、怒りは抑えるものという価値観を知らず知らずのうちに植え付けられています。
怒って良いんだよ!と言われると、あなたも戸惑いますよね。
そもそも怒りは抑えられるものではありません。怒りを抑えると、こころのなかでどんどん大きくなって最後には爆発し、相手を傷つけてしまいます。そうなる前に上手に怒りを表現する!その方法をアサーショントレーニングは教えてくれます!
アサーショントレーニングについては、こちらの記事をご覧ください!
この記事では、相手を大切にできない原因である「怒り」のメカニズムと、怒りを上手に表現するコツを解説します!記事を読むと、明日から優しく怒りを表現できるようになります!
ライターは臨床心理士の資格を持っていて、心理職として仕事をしてきました。心理職のお仕事には、講演や特別授業を通したこころの元気に役立つ情報発信も含まれます。なかでも、「人付き合い」や「人との関わり方」は、僕が「誰かの役に立つ」と信じて発信してきた情報のひとつです。今回はその内容を記事にしてまとめていきたいと思います!
なんで相手を大切にできないの?
怒りの感情で人と関わってしまうから
誰かと関わるときに相手を大切にできない人は、怒りの感情に突き動かされてしまっていることが多いです。
私たちが持っている感情のなかで、一番扱いに難儀するのが「怒り」です。私たちの多くは、「怒りは表現してはいけない」という価値観のなかで育ちます。そのせいで、私たちは怒りを上手に扱うことができなくなっています。
自分のことを振り返ってみてください。例えば次のようなとき。
✔︎日頃の不満を恋人にぶつけるとき
✔︎子どもに注意するとき
✔︎いつも言えないことを友達に伝えるとき
あなたは、「我慢する」か「怒るか」の二択から選択していないですか。
僕はだいたいそうです!
実は、これってかなり極端な二択なんです。
そもそも、「怒り」と「怒る」はちょっと違います。
✔︎ちょっとムカっとした。
✔︎なんだかイライラする。
✔︎なんで何度言ってもわからないの!
✔︎もう良い加減にしてよ!
これでは相手のことを大切にはできないですよね。こうした怒りが爆発した関わり方をアサーショントレーニングでは「攻撃的」な関わり方と呼んでいます。
「攻撃的」な関わり方については、こちらでさらに詳しく解説しています!
閉じ込められた怒りはどんどん大きくなる
実は、「怒り」には程度があります。そして、私たちは知らず知らずのうちに、小さな怒りを大きな怒りに育てています。アサーショントレーニングでは、「怒り」の程度に次の3つの次元を想定しています。
✔︎マイルドな怒り
✔︎中程度の怒り
✔︎最も強い怒り
マイルドな怒りは「なんだか嫌だな」といった、ちょっとこころにざわつきを覚える程度の感覚です。
中程度の怒りは「イライラするな!」といった抑えられるけど気持ち悪いと感じる感覚です。
最も強い怒りは「ぶん殴ってやりたい!」といった、とても抑えきれない激しい衝動を伴う感覚です。
もちろん、あまりにも理不尽な仕打ちを受けたときなど、いきなり「最も強度の怒り」を感じることもありますが、多くの場合、「マイルドな怒り」が少しずつ育って「最も強度の怒り」になります。
「波風立てずに平和に過ごすのが良い」というのは私たち日本人にはおなじみの風土です。この風土のなかでは怒りは表現するべきではないとされています。
そして、表現しない代わりに、私たちは「怒り」を感じると我慢することを教え込まれます。
怒りを我慢するということは、怒りをこころの内に閉じ込めるということです。私たちは、それはもう徹底して、空気も漏れないように密閉して、怒りを閉じ込めます。
そうして密閉されたこころに閉じ込められた怒りは、あなたの養分を吸い上げ、どんどん膨らんでいきます。そして、限界に達すると、こころの扉を突き破って表に暴れ出ます。
この、怒りが暴れ出た状態が「怒る」です。
我慢できる怒りは我慢する。我慢できなくなると怒る。これが、私たちが攻撃的な関わり方になってしまうメカニズムです!
相手を大切にするコツ
小さな怒りのときに伝えよう
怒りは小さな怒りのうちに表現してしまう。これが一番です!
実は、怒りの感情の全てが人を傷付けるわけではありません。こころに閉じ込めたばかりの怒りは、まだ小さな怒り。赤ちゃんのようなものです。「イライラするな…」「ちょっと嫌な気持ちになっちゃったな…」これくらいであれば、まだ自分も相手も傷つけることはありません。
この怒りの赤ちゃんを上手に関係のなかで表現できるようになると、自分も相手も大切にできる関わり方ができるようになります。
では、どのように怒りの赤ちゃんを表現したら良いのでしょうか。
アサーショントレーニングには、アイメッセージという技術があります。
アイメッセージは、主語が「i」のメッセージ。つまり、「私は」から始まるメッセージです。例えば恋人に注意するとき。
(彼、いつも便器のふた閉めてくれないからイライラしちゃう…)
ねえ、便器のふた閉めてっていつも言ってるじゃん!(あなたは)なんでわからないの!?
では、同じ内容をアイメッセージで見てみましょう。
(彼、いつも便器のふた閉めてくれないからイライラしちゃう…)
ねえねえ、便器のふた、閉めてくれないと(私は)嫌な気持ちになっちゃうんだよね…
「怒りは我慢するもの」ではなく、赤ちゃんのうちに上手に表現するものです。それを助けてくれるのがアイメッセージです。
この他にも、次のようなアイメッセージがあります。
✔︎(遅れてきた友達に対して)遅いから(私が)心配しちゃったよ。今度から、遅れるときは(私が)連絡して欲しいな。
✔︎(新入社員の仕事の態度を注意するとき)もう社会人になったんだから、もう少し自覚を持って仕事をして欲しいなって(私は)嫌な気持ちになっちゃうよ。
アイメッセージについては、こちらでさらに詳しく解説しています!
怒りになる前の感情を表現しよう
最後にとっておきをお話します。
実は、怒りは、はじめから怒りだったわけじゃないんです!
ちょっと変な話ですよね…
怒りは別名、二次的感情と呼ばれるもので、あなたのこころを脅かす一次的感情が生じたときに、こころの安寧を守るために生じる感情です。
これらの感情は、とってもデリケートで、私たちの本能を強烈に刺激します。そして「このままだと危険だよ!」「ひとりぼっちになっちゃう!」「大変なことになっちゃうよ!」そんなメッセージを発します。すると、こころは「怒り」を産み落とし、自分を守ろうとします。例えば次のように…
✔︎私を捨てないで!
✔︎ひとりにしないで!
このように、一次的感情に誘発されて生じるという意味で、怒りは二次的感情と呼ばれるのです。
怒りは、一次的感情が上手にケアされれば、そもそも生じさせずに済むものです。
「寂しさ」「不安」「孤独」「恐怖」これらの感情は、対人関係のなかで生じます。
あなたの目の前にいる人は信頼できる人ですか?
一次的感情を表現するのはとっても勇気のいることです。でも、もし、その人が信頼できると思えたら、勇気を出して、素直に自分の気持ちを語ってみるのも良いかもしれません。
一次的感情・二次的感情については、こちらの記事で詳しく解説しています!
おわりに
この記事では、私たちが「相手を大切にできない関わり方」をしてしまう理由について「怒り」の視点から解説しました!
記事のポイントは次の通りです。
✔︎相手を大切にできないのは、「怒り」の感情をぶつけているから!
✔︎毎日の生活のなかで感じる小さな「怒り」は、こころに閉じ込めることでどんどん大きくなっていく!
✔︎相手を大切にする関わり方のコツは、小さな怒りのときに伝えること!
✔︎小さな怒りなら、相手にとっての負担も少ない!
✔︎相手を大切にする関わり方のコツは、怒りになる前の感情(一次的感情)を相手に伝えること!
✔︎信頼できる相手なら、一次的感情を伝えても大丈夫!
あなたのお役に立てると幸いです!
参考・引用
平木典子(1993).アサーショントレーニング-さわやかな自己表現のために-.日精研心理臨床センター.
平木典子(2007).自分の気持ちをきちんと〈伝える〉技術.PHP.
平木典子監修(2018).対人関係のスキルを学ぶワークブック.培風館.
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